2007年06月05日

エコな人


今年の夏は猛暑になると予想されている。気温が上がってくると「温暖化の影響だろうか」と憂えてしまうのは、環境破壊の時代を生きる現代人の悲しい性だろうか。
Mさん(31歳)は30を過ぎて、初めて夢を追う転職を考えるようになった。
彼女は4年前に結婚。出産・育児休暇を経て職場に復帰したのだが、当然ながら、かつて広報で自分がやっていた仕事は他の人のモノとなっていた。別の部署(カスタマーサポート)に異動になったMさんは、仕事のやりがいを見いだせず転職に動いた。
「結婚したことで生活は安定しました。ですから、もし出来るなら本当に自分がやりたい仕事が出来ないかと…」
Mさんは控えめな様子で希望を口にした。

Mさんは大学時代、理学部の生物学科に所属していた。
「フィールドワークに出てみると、環境破壊を肌に染みて感じます。大学2年の時に、はじめて海外に調査に行きました。調査対象のエリアに、樹齢百年以上の大きな樹があって、そこでみんなで記念撮影をするくらい立派なものだったのが、半年後に同じ場所にいったら、もう何も残っていなかったんです。道路にするための整備だって。あれはショックでした」
社会人になった後も、環境保護活動とつながりがあった。
「活動なんていうと大げさですけど」

Mさんは、恥ずかしそうに口の前で手を振る仕草をした。
「忙しくて、自分のことで手一杯でしたから。ただ、グループの会員になって、年会費を払って、時々パーティーとか講演会みたいなものに参加させてもらっていました」
日頃の生活でもMさんはエコライフを貫いている。家電製品は全てエコ仕様。移動には出来るだけ公共交通機関を使い、外食の時は割り箸を使わなくていいように塗り箸を持ち歩く。料理に使う食品は、輸送に使われるエネルギーが少なくなるよう、出来るだけ地場のものを買っているのだそうだ。

Mさんの転職の希望は「エコロジー関連」だった。若い人がイメージだけで「エコロジーな会社に」と希望するのは珍しくない。しかし、おっとりした性格ではありながら、環境を語るMさんには熱い思いがにじみ出ていた。
これだけの『エコキャリア』があるなら、企業も評価してくれるのではないか。我々はそんな思いで環境に強い関心を持っている企業、環境対策の技術開発を行っているメーカーなどにMさんを引き合わせた。
しかし、結果は思わしいものではなかった。

企業側は「いい人なんですけど、環境のことだけでは…。やはり会社としては商売のことを第一に考えてもらわないと」と言い、Mさんは「あの会社では不完全燃焼になりそう」と、双方が辞退をするという状況が続いたのだった。
意識のギャップは明らかで、3社の面接が終わった時点でMさんは我々に「やはり、もっと現実的にならなくてはいけないのでしょうか」と、力無くこぼしていた。
そんな時に飛び込んできた求人が、ゼネコンA社の広報職であった。

A社はこれまでたびたび海外のリゾート開発を手掛けてきた、いわば『環境破壊側』の企業である。しかし、社内ではこのままでいいのかという議論が繰り返しされており、今年度、初めてA社と環境保護を結びつけるためのプロジェクトチームが作られたばかりだという。
「今回の採用は、外から人を入れることでA社にない視点を持とうという試みです」
A社の人事は採用の意図をそう説明してくれた。

Mさんは求人の詳細を聞いて興味をかき立てられていたが、いわばA社は敵の本陣である。面接前には「相手は大企業ですし、どうしたらいいのか」と緊張した様子も見せていた。
だが、このマッチングは大成功だった。
A社は「まったく違ったカルチャーの人。おっとりしたキャラクターも良いですね。うちの社員はプライドが高くて、新しく入った人に色々言われると反感を持ちかねないと思っていたのですが、彼女ならその心配はないでしょう」とMさんを絶賛。Mさんも「A社のような影響力のある会社で、こんなプロジェクトに取り組めるなんて…」と、瞬くうちに入社が決まったのだった。

「まさか自分が開発会社に転職することになるなんて…。大学時代の友人に言ったら、裏切り者って呼ばれそう(笑)。自分ひとりで動いていたら、絶対に見つからない選択肢でした」
Mさんはそう言って、わざわざ我々のところにお礼に来てくれた。
ちなみにその時、彼女が持参したオミヤゲは「小さくたためるバッグ」。
「レジ袋に使って下さい。布地は薄いですけど、20キロまで耐久力のあるすぐれモノです」
最後までエコなMさんなのであった。
posted by greynatural at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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